必要のない土地だけを相続放棄できるか
1 必要のない土地だけを相続放棄することはできません
結論から申し上げますと、被相続人の財産のうち、必要がない土地だけを相続放棄し、その他の財産は取得するということはできません。
相続放棄の法的性質上、取得する相続財産を選択するということはできないためです。
一定の条件を満たす必要はありますが、相続等によって土地の所有権または共有持ち分を取得した場合には、その土地の所有権(共有持分権)を国庫に帰属させることができる制度もあります。
以下、詳しく説明します。
2 相続放棄の法的性質
相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになるという法的効果が発生します。
感覚的には、相続放棄をすると、相続とは全く関係がない他人になります。
そのため、一切相続放棄を取得することができなくなります(相続債務を負担することも一切なくなります)。
必要のない土地を相続せずには済みますが、それ以外の相続財産を取得することもできません。
【参考条文】(民法)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
3 相続土地国庫帰属制度
令和5年4月27日以降、相続等によって取得した土地を国庫に帰属させることができる制度が開始されました。
相続財産の中に、必要のない土地が含まれている場合、この制度を利用して法務局に申請することで、その土地を手放すことができる可能性があります。
ただし、相続土地国庫帰属制度を利用できる条件は比較的厳しいことに注意が必要です。
具体的には、次のような土地には利用できないことになっています。
①建物がある土地
②担保権や使用収益権が設定されている土地
③他人の利用が予定されている土地
④土壌汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
⑥一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
⑦土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
⑧土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
⑩その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
参考リンク:法務局(相続土地国庫帰属制度の概要)